品種登録を受けられる者
原則.品種を育成した者または承継人(相続人、譲受人など)
品種の育成とは
人為的変異または自然的変異(突然変異)に係る特性を固定しまたは検定すること。
職務育成品種について
職務育成品種とは、従業者が使用者等の指揮監督により育成した品種であります。
職務育成品種について、会社など使用者の名義で品種登録出願をする場合は、労
働契約または就業規則などであらかじめその旨を定めておく必要があります。
品種保護の対象
1.農産物、林産物及び水産物の生産のために栽培される種子植物
(例えば、稲、バラ、りんどう、いちご、りんご、なし、トマトなど)
2.しだ類(ワラビ、ゼンマイなど)
3.せんたい類(コケなど)
4.多細胞の藻類(ワカメ、コンブ、ノリなど)
5.政令で指定されたきのこ
政令で指定されているきのこ(32種)
あらげきくらげ、うすひらたけ、えのきたけ、エリンギ、おおひらたけ、きくらげ、きぬがさ たけ、くりたけ、くろあわびたけ、こむらさきしめじ、しいたけ、しろたもぎたけ、たまちょれ いたけ、たもぎたけ、つくりたけ、とんびまいたけ、なめこ、におうしめじ、ぬぬりすぎたけ、 はたけしめじ、はなびらたけ、ひめまつたけ、ひらたけ、ぶなしめじ、ぶなはりたけ、ほんし めじ、まいたけ、まんねんたけ、むきたけ、むらさきしめじ、やなぎまつたけ、やまぶしたけ |
品種登録の要件
1.区別性
既存品種と重要な形質(形状、品質、耐病性など植物の種類ごとに定められ告示されて
いる)で明確に区別できること。
2.均一性
同一世代でその形質が十分類似していること。
(同時に栽培した種苗からすべて同じものができること。)
3.安定性
増殖後も形質が安定していること。
(何世代増殖を繰り返しても同じものができること。)
4.未譲渡性
出願日から1年遡った日より前に出願品種の種苗や収穫物を業として譲渡していない
こと。
外国での譲渡は、日本での出願日から4年(材木、鑑賞樹、果樹等の永年性植物は6
年)遡った日から起算される。
ただし、試験栽培(試験研究目的の譲渡)については譲渡とは扱われません。
5.名称の適切性
品種の名称が既存の品種や登録商標と紛らわしいものでないこと。
(出願品種に関連する登録商標と同一または類似する名称、あるいは既存品種の名称
と類似するなど出願品種に関し誤認混同を与える名称ではないこと。)
先育成について
登録品種を育成した者よりも先に当該登録品種と同一の品種または特性により明確に区
別されない品種を育成(先育成)した者に対しては、登録品種に係る育成者権について通
常利用権が与えられます。
つまり、先育成者は品種登録後も育成者権者の許諾なしにそのまま登録品種を継続して
利用することができます。
先育成を主張するには、1.登録品種と先育成を主張する品種が同一または特性により
明確に区別されない品種であること、2.品種育成の年月日が登録品種の育成の年月日
よりも先であることを証明できなければなりません。
そこで、(独)種苗管理センターに対し育成した新品種の種苗等を寄託したり、比較栽培
による品種類似性試験を行ってもらうことになります。
また、事実実験公正証書の作成または栽培試験データや特性を表す文書等への確定日
付の取得(存在事実証明)などの公証制度を利用する方法もあります。
品種登録出願するまでの間ないし育成した品種が品種登録するための要件を満たしてい
ない場合などには、これらの方法を活用してみるべきです。
種苗法と特許との関係
種苗法は、農林水産植物の品種(現実に存在する植物体の集合そのもの)を保護するも
のであります。
品種とは、重要な形質に係る特性の全部または一部によって他の植物体の集合と区別
することができ、かつ、その特性の全部を保持しつつ繁殖させることができる一の植物体
の集合であります。
また、種苗や収穫物、加工品も種苗法(育成者権)により保護されます。
種苗とは、植物体の全部または一部で繁殖の用に供されるものを言います。
例えば、種子、苗、枝、塊茎、球根、根、芽、葉など植物体の個体数の増加を目的として使
用されるものであれば、すべて種苗に該当します。
収穫物とは、植物体の全部または一部で種苗を用いることにより得られたものを言います。
例えば、花、果物、野菜、穀物などが収穫物となります。
加工品とは、種苗を用いることにより得られる収穫物から直接生産されたもので政令で指
定されたものを言います。
政令で指定されたものは、小豆、いぐさ、稲、茶の加工品であります。
それに対し、特許とは、植物の新品種を育成し増殖する方法(技術的思想で高度なもの)
を発明として保護するものであります。
例えば、DNA組換え方法などによる植物の育成方法、それから、細胞培養による植物の
増殖方法などが発明として保護されます。
品種登録と商標登録、地理的表示保護制度との関係
品種登録とは、突然変異または人為的変異により生じた変異体を選択する方法、遺伝子
組換え、細胞融合、他の品種と交配するなど品種改良された新たな品種を登録する制度
であります。
それに対し、商標登録とは、文字、図形、記号、立体的形状やこれらの組合せ、またはこ
れと色彩との組合せによって作られた商品マーク、サービスマークなどを登録する制度で
あります。
例えば、販売の対象となる種子、苗、花、野菜、果物やその加工品などの商品名やロゴ
については商標登録することができます。
しかし、登録品種の名称と同一または類似する商標で、同じ品種の種苗や類似する商品
に使用されるものについては商標登録することはできません。
この場合、商標登録の出願人と育成者権者が同一であってもです。
また、品種名は品種を特定する普通名称であるため、商標登録されません。
なお、2006年4月から地域団体商標制度が創設され、「地域名+商品名」で商標登録す
ることができます。
さらに、2015年6月から地理的表示保護制度が創設されております。
地理的表示とは、決められた産地で生産され、指定された品種、生産方法、生産期間な
ど適切に管理された農林水産品にGIマークを表示するものであります。
商標は、特定の生産者のみに独占的な使用を認めるものであるのに対し、地理的表示
は、原産地と品質を保証するもので、条件さえ満たせば複数の生産者が使用することが
できるものです。
不正競争防止法との関係
登録品種から生まれた種子、苗、野菜、果物などの商品やサービスに表示される商標は、
未登録商標であっても不正競争防止法によって保護されます。
ただし、全国的ないし一地方において需要者に広く知られた商標に限られます。
この場合、先使用権により他人が商標登録した後も引続き使用することができます。
植物の栽培方法など技術的情報(ノウハウ)は文書化し秘密情報として管理すれば、特許
を取得しなくても「営業秘密」として不正競争防止法によって保護されます。
また、F1品種(交雑品種)については、あえて品種登録せず、親株情報を営業秘密として
管理する方が有効な場合もあります。
営業秘密は、他の一般情報と区別するなどして客観的に秘密情報して管理することが求
められます。
技術的情報を文書化するにあたっては存在事実証明手続きを行うことをお勧めします。
そうすれば、発明の先使用権が立証できるため、他人が特許を取得しても継続して使用
することができます。
そうすれば、営業秘密として他の一般情報と区別して管理することも容易になります。
営業秘密として保護された情報を第三者に提供するにあたっては、秘密保持契約を交わ
すことも重要です。
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