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著作権ビジネス立上げマニュアル
著作権ビジネス運営のポイント 

著作権管理事業運営のポイント 

1.登録事項の変更などがあった場合は?

 役員の氏名、事業所の所在地など登録事項に変更があった場合は、2週間以内に文化
 庁長官に対し変更の届出をする必要があります。

 また、合併や営業譲渡が行われた場合は承継の届出を、解散などにより管理事業を行
 わなくなった場合は廃業の届出をする必要があります。 

2.管理委託契約約款を変更した場合は?

 管理委託契約約款の内容を変更した場合は、文化庁長官に対し変更の届出をする必
 要があります。

 さらに、委託者に対し、遅滞なく届出に関する管理委託契約約款の内容について通知
 する必要があります。 

3.使用料規定を変更する場合は?

 使用料規定を定め、または変更をする際は、利用者などからあらかじめ意見を聴取す
 る努力義務があります。

 ただ、努力義務となっているが、意見聴取義務を怠ると使用料規定の効力は実務的に
 認めない傾向なので、その点も頭に入れて対応すべきです。

 また、文化庁長官に対し変更の届出をし、遅滞なく使用料規定の概要を公表しなけれ
 ばなりません。

 なお、管理事業者は、届出をした使用料規定に定める額を超えて使用料を請求するこ
 とはできません。 

4.使用料規定が実施できるのは?

 使用料規定の届出をした場合、文化庁長官が届出を受理した日から起算して30日を
 経過するまでの間は、使用料規定を実施することはできません。 

 なぜなら、利用者に対する周知期間及び利用者側の準備期間を確保し、ケースに応
 じて利益者の代表者との協議を行う期間を設けることが望ましいこと、それから、文化
 庁長官が使用料規定の内容が著作物等の円滑な利用を阻害することがないか判断
 し、ケースによって実施までに適切な処分を行えるようにするためであります。

 さらに、文化庁長官は使用料規定が著作物等の円滑な利用を阻害するおそれがある
 と認めるときは、3カ月以内で禁止期間を延長することができます。

5.利用許諾を拒否できるケースは?

 管理事業者は、原則として取扱っている著作物等の利用の許諾を拒否することはでき
 ません。 

 ただし、「正当な理由」があれば利用の許諾を拒否することができます。

 利用許諾を拒否できる「正当な理由」がある場合とは、許諾することが委託者の意思
 に反する場合、利用者が使用料を支払わない場合や著作者人格権などを侵害する方
 法による利用を行う場合などであります。 

 許諾することが委託者の意思に反する場合とは、委託者が環境破壊や飲酒・喫煙の
 助長につながるような方法による利用を拒否するように依頼していたなど、特定の態
 様の利用行為に対して委託者の拒否の意思が明らかにされている場合、

 または、許諾することが委託者の合理的意思に反する(委託者であれば通常許諾を
 望まない)と認められる場合であります。

 「正当な理由」があるか否かは、個々の委託者の利害が実情にとどまらず、著作権等
 に関する適正な管理と管理団体業務への信頼の維持の必要性などについても勘案し
 たうえで、利用者への許諾が通常の委託者の合理的意思に反するか否かの観点から
 判断されます。

6.管理事業者の義務は?

 管理事業者が取扱っている著作物等を、利用者が具体的に特定することができるよう
 にするため、著作物等の題号、名称、利用方法に関する情報などを利用者に提供しな
 ければなりません。 

 また、毎事業年度経過後3カ月以内に、その事業年度における貸借対照表、事業報告
 書、損益計算書または収支計算書を作成し、5年間事業所に備え置かなければなりま
 せん。 

 なお、委託者は、管理事業者の営業時間内はいつでも、財務諸表等の閲覧などを請求
 することができます。 

7.文化庁による監督とは?

 文化庁長官には、管理事業者に対し、業務もしくは財産の状況に関し報告させる権限、
 または、事業所に立ち入り、業務の状況もしくは帳簿、書類などを検査する権限があり
 ます。 

 そこで、業務運営に関し、委託者または利用者を害する事実があると認めるときは、管
 理事業者に対し業務改善命令がなされます。 

8.管理事業者の登録が取り消される場合は? 

 管理事業者が、1.著作権等管理事業法「もしくは同法に基づく命令又は処分に違反し
 た場合、2.不正の手段により登録を受けた場合、3.登録拒否事由に該当するように
 なった場合は、文化庁長官は管理事業者の登録を取り消すことができます。 

 また、登録を受けてから1年以内に管理事業を開始せず、あるいは、引き続き1年以上
 管理事業を行っていないと認められる場合も、登録を取り消すことができます。

9.指定著作権管理事業者とは?

 指定著作権管理事業者とは、1.利用区分において徴収された使用料の総額に占める
 すべての管理事業者の徴収した使用料総額の割合が相当であること、2.管理事業者
 の使用料規定が、利用区分における使用料額の基準として広く用いられており、かつ、
 利用区分における著作物等の円滑な利用を図るため特に必要があると認められること
 により、文化庁長官により指定された管理事業者であります。

 指定著作権管理事業者は、使用料規定について一定の規制を受けます。

 現在、指定著作権管理事業者に指定されているのは、(社)日本音楽著作権協会、
 (協)日本脚本家連盟、(協)日本シナリオ作家協会、(公社)日本複製権センター、
 (社)日本レコード協会、(公社)日本芸能実演家団体協議会の6団体であります。

10.信託による管理と委任による管理との違いは?

 信託による管理の場合は、著作権または著作隣接権が譲渡されることから、著作権管
 理事業者は権利者となります。 

 そのため、使用料を支払わない者への支払い請求や無断利用を行っている者への差
 止請求、それから、訴訟提起や刑事告訴などの法的措置を直接行うことができます。 

 委任(取次ぎまたは代理)による管理の場合は、著作権管理事業者は権利者とならな
 いため、回収困難な使用料の督促、無断利用に対する差止請求や訴訟提起など争訟
 性が相当程度認められる業務を行うことができないとされています。 

11.委任による管理で取次ぎと代理とでの違いは? 

 利用者との間で利用許諾契約を締結するにあたって、委託者と受託者どちらとの間で
 契約が成立するかという点であります。

 代理の場合は、契約が著作権者など委託者と利用者との間で成立することになります。
 そのため、受託者である著作権管理事業者は利用許諾契約締結に際して委託者本人
 の名を示すことが必要になります。

 それに対し、取次ぎの場合は、契約が受託者と利用者との間で直接成立することになり
 ます。

 とはいえ、取次ぎの場合でも契約締結に伴う経済的効果は委託者に帰属することになる
 ので、実質的には代理と取次ぎとで大きな違いがあるわけではありません。

12.信託法または信託業法との関係は?

 著作権管理事業者の信託業務は、著作物の利用許諾その他無断利用の監視、使用料
 を徴収し分配するなどの管理行為を目的とするものであります。 

 信託法上の信託は、これらの管理行為に加え、信託財産の処分を目的とする行為も含
 まれておりますが、著作権管理事業においては、処分を目的とするものは管理行為に含
 まれません。 

 そのため、著作権管理事業者は、著作権または著作隣接権を売却することや、投資家
 から資金を調達するための運用などは行うことができません。 

 著作権等の処分を目的とする信託業務を行うには、信託業法に基づく免許または登録
 が必要となります。
 なお、著作権管理事業による信託業務については、信託業法は適用されません。 

 それから、信託を目的とする著作権管理事業者は、善管注意義務、忠実義務、分別管
 理義務など信託法29条から37条に規定された義務を負います。

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LLP運営のポイント  

1.意思決定の方法は?

 業務執行に関する意思決定は、原則として総組合員の全員一致により行われます。

 なぜなら、LLPは組合契約に基づき、組合員全員の個性や能力を活かしつつ、共通の
 目的に向かって主体的に組合事業に参画するという制度のニーズに基づいて導入した
 制度であるからです。 

 なお、LLP契約において意思決定の方法を全員一致以外の方法で定めることも可能で
 あるが、1.重要な財産の処分又は譲り受け、2.多額の借財については、全員一致、
 または組合員の3分の2以上の同意で決定する必要があります。

2.業務執行のやり方は?

 業務執行は原則として全員参加で行う必要があります。
 なぜなら、LLPの組合員は、全員が業務を執行する権利を有し、その義務を負っている
 からです。 

 そこで、業務執行を分担することは可能ですが、その全部を他の組合員に委任すること
 はできないため、LLPを代表する組合員(代表組合員)を定めることはできません。 

 業務執行の内容には、例えば、対外的な契約締結などのLLPの営業に関する行為や、
 その契約のための交渉、あるいは、具体的な研究開発計画の策定・設計、帳簿記入、
 商品管理、使用人の指揮・監督等、組合事業の運営上重要な部分が含まれます。

 ただし、備品の購入などLLPの常務については、他の組合員が異議を述べなければ、
 各組合員が単独で行うことができます。 

3.柔軟な権限の分配の方法は? 

 LLPにおいては、重要な意思決定の全員一致、業務執行への全員参加が、組織の前
 提となる共同事業要件として強制されますが、この要件を満たす範囲で、各組合員の業
 務分担や権限は柔軟に決定できます。

 この業務分担や権限については、組合員全員が合意の上、組合契約書に明記したり、
 契約の詳細事項を決める組合員間の規約などで規定することも認められます。  

4.柔軟な損益分配のやり方は?

 柔軟な損益分配の取り決めは、総組合員の同意により、または、書面で分配割合を定
 めて行う必要があります。

 その際、書面に分配割合を定めた理由及び、実際に定めた割合が合理的であることを
 明らかにする事由について記載し、その書面を適切に保存する必要があります。 

 なお、損益分配の取り決めをしない場合は、出資比率に応じて分配する必要があります。

5.どのように取引先等と契約を締結するのか?

 LLPは法人格がないため、組合員の肩書き付き名義で、取引先等との契約を締結する
 ことになります。
 この場合、契約の効果は、LLPの全組合員に及ぶことになります。

 例えば、売買契約、労働契約、業務委託契約、ライセンス契約などLLPの業務に必要な
 多様な契約が該当します。 

 また、組合員の肩書き名義で補助金や融資も受けられます。

6.財産の所有形態は?

 組合契約によって出資された不動産、または著作権や特許権などの知的財産権、それ
 から、組合が取引行為によって取得した組合財産は、組合員全員の共有となります。

 ただし、組合財産に対して強制執行等をすることができる者の範囲を限定していること、
 原則して組合財産に対する強制執行等を禁止するなど、LLPの目的に沿った制限が加
 えられているので、実質的には「合有」と扱われます。

 なお、LLP自身の名義による登記はできないので、LLPの財産であることを表示したい
 場合は、「組合員個人全員の共有」登録し、併せて「共有物不分割」の登記をする必要
 があります。

7.許認可を取得するには?

 LLPで許認可が必要な事業を実施する際は、事業にあたる各組合員が許認可を取得
 する必要があります。

 具体的には、組合として許認可を取得するのではなく、各組合員が許認可を取得した上
 で、必要に応じて許認可を取得する者が集まって共同事業を行うことになります。

 特許出願または著作権登録、品種登録をする場合は、組合員全員で共同申請すること
 になります。 

 なお、LLP名義で許認可を取得できないことから、行う事業につきLLPでは許認可を受
 けられないものもあるので、LLPを設立する際は事前に確認しておく必要があります。

8.財務諸表の作成や公告は?

 LLP設立時に貸借対照表を作成し、毎事業年度ごとに貸借対照表、損益計算書、及び
 その附属明細書を作成し、組合契約書と併せて10年間保存する必要があります。

 財務諸表作成のために作成が義務付けられている会計帳簿については、閉鎖時から
 10年間保存する必要があり、また、組合員に写しを交付しなければなりません。

 ただし、決算公告義務はないので、決算書類を官報やウェブサイトなどに公告する必要
 はありません。

 それから、LLPの債権者については、LLPの営業時間内はいつでも、財務諸表(作成し
 た日から5年以内のもの)と組合契約書の閲覧及び謄写を請求することができます。

9.組合員の新規加入、脱退を行うには?

 組合員の新規加入は、全員一致による決定が必要で、組合契約の変更及び変更の登
 記が必要となります。 
 ちなみに、組合員の任期はなく、あくまでLLPの存続期間となります。 

 一方、組合員の脱退は、LLP法上の法定脱退事由及び、組合契約上の脱退事由、それ
 から、やむを得ない事由がある場合に限られます。 

 ただし、組合員が職務を怠ったときは、他の組合員の同意により除名して脱退させること
 ができます。

 その際も、組合契約の変更及び登記の変更が必要となります。 

 なお、組合員の新規加入や脱退に際しては、仮決算をして各組合員の持分割合を再計
 算することが必要となります。

 そのため、組合員の頻繁な加入、脱退には不向きな組織と言えます。 

10.組合員の地位を第三者に譲渡できるか?

 原則として組合員の地位を第三者に譲渡することはできません。

 しかし、組合契約の定めがある場合、または他の組合員全員の同意を得た場合は、地
 位をを第三者に譲渡し、新しい組合員を迎え入れることができます。

 その際、持分を譲渡する組合員が脱退し、譲り受ける組合員が新規加入することになる
 ため、組合契約の変更、登記の変更、持分割合の再計算の手続きが必要となります。

11.組合財産を分配するには? 

 組合財産の分配につき、組合員への分配額の合計が剰余金相当額の範囲内にある限
 り、分配額をどのように定めるか、どのような手続きで組合員に対し分配するかについて、
 組合員の間で自由に定めることができます。

 剰余金分配額とは、分配日におけるLLPの純資産額から組合員の出資額を控除した額
 に相当する額を言います。

 さらに、剰余金相当額を超える分配を行う場合は、組合員全員の同意を得ること、または
 分配日から2週間以内に、超過分配額、分配日、超過分配額の累計額の3点を組合契約
 書に記載しなければなりません。

 なお、剰余金相当額を超える分配のうち、分配可能額を超える分配は絶対的に禁止され
 ます。 

 分配可能額は、純資産額から300万円を差し引いた額となります。(出資額が300万円
 未満の場合は、純資産額から出資額を差し引いた額が分配可能額となる。)

 もし、この制限に反し違法な分配が行われた場合は、各組合員が自ら受領した分配額を
 組合財産に返還する義務を負うほか、分配配当額を超えた分配に対しては各組合員が
 分配総額を連帯して組合財産に返還する義務を負い、分配配当額の超過部分について
 は組合債権者に直接責任をも負わなければなりません。
 
12.株式会社などの会社形態に組織変更できるか?

 LLPは法人格を持たないため、法人格のある会社形態への組織変更はできません。

 そこで、株式会社または合同会社に組織変更する必要が生じた場合は、LLPを解散し
 新たに会社を設立するか、LLPを解散する前に新会社を立ち上げて事業譲渡する形で
 移行することになります。

13.LLPを解散する場合は?

 LLP法上の解散事由(事業の成功または不能、存続期間の満了、総組合員の同意など)
 や、組合契約書に記載された解散事由の発生によりLLPは解散します。

 その際、清算人を置き、債権者との調整や残余財産の出資者への分配をすることにな
 ります。 

 原則として組合員が清算人に就任しますが、総組合員の過半数によって清算人を選任
 することもできます。

 解散にあたっては、解散の登記、清算人の登記をして、清算手続きの完了後に、清算
 結了の登記をする必要があります。 

14.組合契約書を変更するには?

 原則として、組合員全員の同意によって組合契約書を変更する必要があります。

 ただし、事務所の所在地、事業年度、任意的記載事項の変更(損益分配の割合に関す
 る事項を除く)をする場合は、組合契約書によって、組合員全員の同意を要しない旨を
 定めることができます。

 組合契約を変更したことにより登記するべき事項が変更された場合は、変更登記が必
 要となります。 

15.組合員の義務は? 

 LLPの業務により第三者に損害を与えた場合、組合員は組合財産の限度額で損害賠
 償責任を負います。 

 組合員に悪意または重過失があった時は、組合員が個人的にLLPと連帯して損害賠償
 責任を負うことになります。

 また、LLPの財産を組合員の固有財産などと分別して管理する義務があります。 

 さらに、性質上組合員の責任の限度を出資価格とすることが適当でない業務及び、債権
 者に不当な損害を与えるおそれがある業務を行うことは禁止されます。 

16.法人を組合員に選任したら?

 LLPの組合員は、自然人のみならず、法人もなることができます。
 ただし、最低1人は、現在まで引き続き1年以上国内に住所がある個人、または、国内
 に本店ないし主たる事務所がある法人であることが求められます。

 LLPは共同事業を目的としていることから、法人が組合員になるケースもあるかと思わ
 れます。

 その際は、特定の個人を職務執行者として選任し、その者の氏名及び住所を他の組合
 員に通知すると共に登記する必要があります。

 職務執行者については、民法の委任に関する規定が準用(類推適用)されることから、
 菅注意義務などを負うことになります。

17.法人番号は適用されるの?

 法人番号とは、2016年1月からスタートしたマイナンバー制度により、法人に割り当てら
 れる13桁の番号であります。

 法人番号については、マイナンバーのように社会保障、税、災害対策と利用目的が限定
 されているものではなく、誰でも自由に利用することができるものです。

 さらには、商号や名称、主たる事務所の所在地の情報とともに、国税庁のサイトでも公表
 されます。

 法人番号が指定されるのは、国の機関、地方公共団体、会社法その他の法令の規定に
 より登記された法人(設立登記法人)となっております。

 この設立登記法人には、株式会社、合同会社など会社法上の会社はもちろん、社団法人
 または財団法人、NPO法人など法人税が課税される法人が該当するものです。

 それに対し、LLPは設立登記されるものであるが、法人格を有しないため、法人番号は
 適用されません。 

 何より、法人番号によって、社会保険(健康保険、厚生年金)と労働保険(労災保険、雇
 用保険)の加入逃れはできなくなります。

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合同会社運営のポイント 

1.会社の代表者は?

 原則として、すべての社員(出資者)が会社の代表者となります。
 そこで、すべての社員に業務執行権と代表権が保障されます。

 会社との取引などでは、個々の社員の名前と印鑑だけで契約を締結することができます。

 なお、定款にて業務執行権のある社員(業務執行社員)を定めることができます。
 その際は、業務執行社員が会社を代表することになりますが、それ以外の社員には、業
 務執行社員を監視するための業務及び財産状況に関する調査権が認められます。 

 業務執行社員が複数いる場合は、業務執行社員の各自が会社を代表する権限を有し
 ます。

 また、定款や定款の定めによる社員の互選によって、それから、総社員の同意により
 業務執行社員の中から会社を代表する社員(代表社員)を定めることができます。

 代表社員は、合同会社の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限
 を有します。

2.意思決定の方法は?

 定款で別段の定めがない限り、会社の経営に関する意思決定は、原則として社員全員
 の過半数の同意により行われます。

 なお、定款で業務執行社員に限定した場合は、業務執行社員の過半数の同意により
 決定されます。

 また、定款で意思決定の方法を過半数以外の方法に定めることもできます。

3.業務執行の方法は?

 定款で別段の定めがない限り、原則として社員各自が業務を執行する権限を有します。
 社員が複数(2名以上)ある場合には、社員の過半数をもって業務の執行が決定され
 ます。

 ただし、業務運営に必要な備品の購入や事務所の賃貸契約などの日常の「常務」に関
 する業務は、他の社員が異議を述べなければ、各社員が単独で行うことができます。

 なお、定款により業務執行社員を選任した場合は、業務執行社員が業務執行権を有し
 ます。 

 その際は、原則として正当な理由がなければ業務執行社員を辞任することができず、ま
 た、解任する場合も正当な理由があることに加え、他の社員の同意が必要となります。
 業務執行社員全員が退社したときは、当該定款の定めは効力を失います。 

4.業務執行社員の義務と責任は?

 合同会社と業務執行社員の間の法律関係には、民法の委任の規定が適用されます。

 そこで、業務執行社員は、合同会社に対して善管注意義務及び忠実義務を負います。
 また、競業避止義務、利益相反取引を制限する義務などを負います。

 なお、定款の定めがない限り、競業取引(自己または第三者のために合同会社の事業
 の部類に属する取引、または合同会社の事業と同種の事業を目的とする会社の役員
 等になること)を行う場合は、「他の社員全員の承認」が、

 利益相反取引(自己または第三者のため合同会社と取引することや、会社が業務執行
 社員等の債務を保証すること)を行う場合は、「他の社員の過半数の承認」が必要とな
 ります。

 さらに、任務を怠ったときは合同会社に対し連帯で、それから、職務を行うについて悪
 意または重過失があったときは第三者に対して損害賠償責任を負います。 

 ただし、代表社員については悪意または重過失がなくても第三者に加えた損害を賠
 償する責任があります。

 自己若しくは第三者の利益を図る目的または合同会社に損害を加える目的で、任務
 に反する行為をし会社に財産上の損害を加えたときは、背任罪で刑事責任(5年以下
 の懲役または50万円以下の罰金)に問われることにもなります。

5.利益を分配するには?

 原則として、社員の出資比率に応じて分配がなされますが、利益分配については定款
 で出資比率を考慮することなく自由に定めることができます。

 そのため、出資比率と無関係に個々の社員のアイディアや技術面での貢献度などに応
 じて分配することができます。 

 例えば、10%の出資をした社員が90%の利益分配を受けることも可能であります。

 ただし、財源規制により利益の分配によって社員に対して交付する金銭等の帳簿価格
 が、利益を分配する日における利益額を超える場合には、利益を分配することはできま
 せん。

 もし、この規制に反して違法な利益分配を実行した場合は、業務を執行した社員は、利
 益を受けた社員と連帯責任で、分配額に相当する金銭を合同会社に対して支払う義務
 を負います。

6.計算書類の作成や公告は?

 合同会社設立時に貸借対照表を作成し、毎事業年度ごとに貸借対照表、損益計算書、
 社員持分変動計算書を作成し、10年間保存する義務があります。 

 計算書類作成のために作成が義務付けられている会計帳簿については、閉鎖時から
 10年間保存する義務があります。

 ただし、株式会社とは異なり決算公告義務はないので、決算書類を官報や新聞、ウェブ
 サイトに公告する必要はありません。

 そして、合同会社の社員は、会社の営業時間内はいつでも、財務諸表の閲覧及び謄写
 (計算書類の閲覧等)を請求することができます。

 計算書類の閲覧等請求については、社員が事業年度の終了時に閲覧等を請求すること
 を制限する旨を定款で定めることはできません。 

 また、合同会社の債権者も、会社の営業時間内はいつでも、作成した日から5年以内の
 ものに限られるが、計算書類の閲覧等を請求することができます。

7.社員の入社及び退社をするには? 

 まず、合同会社の社員には、株式会社の取締役のように、2年(株式譲渡制限会社に
 ついては10年まで延長可)といった任期がありません。

 社員を入社させるには、社員全員の同意を得たうえで定款を変更する必要があります。
 その後、新たに入社する社員は出資金の全額を払い込む必要があります。

 また、現社員の持分を新たに加入する社員に譲渡することによる入社も認められます。
 この場合は、会社に対して新たに出資する必要はありませんが、社員全員の同意を得
 て定款を変更する必要があります。

 一方、社員の退社は、会社法上の法定退社事由及び定款の定めた退社事由、それか
 ら、やむを得ない事由がある場合に限られます。

 合同会社の存続期間を定款で定めなかった場合または特定の社員が終身の間は合同
 会社が存続することを定款で定めた場合は、各社員は6ヵ月前までに退社の予告をする
 ことで事業年度の終了時に退社することができます。

 その際、退社する社員は出資金の払い戻しを受けることができます。

 なお、社員が退社した場合に当該社員に係る定款の定めがあるときは、その社員が
 退社した時に、その定款の条項を廃止する旨の定款変更をしたものと見なされるため、
 実際に定款を変更する必要はありませんが、2週間以内に変更登記は行う必要があり
 ます。

 それから、社員が死亡した場合に死亡した社員の相続人がその持分を承継する旨を
 定款で定めることができます。 

 その場合は、相続人が持分を承継した時に社員となり、定款を変更したものと見なさ
 れます。 

 相続人が2人以上いる場合には、承継した持分について権利を行使する者1人を決
 める必要があります。 

 これは、円滑な事業承継を行ううえで重要なことです。

8.社員の持分を第三者に譲渡するには?

 社員の持分の全部または一部を第三者に譲渡する場合は、原則として社員全員の
 同意が必要となります。

 なぜなら、合同会社は人的会社で社員の個性やつながりを重視しているがゆえ、持
 分の自由譲渡を前提としていないからであります。

 ただし、業務を執行しない社員は、業務執行社員の同意があれば持分の譲渡をする
 ことができます。

9.定款の変更をするには?

 合同会社の定款の変更は、原則として総社員の同意によって行われます。

 ただし、定款で別の変更方法を定めることもできます。
 例えば、定款変更手続きにつき、「社員の3分の2の同意による」旨の定款の定めを
 することも可能であります。

 定款を変更した後は、2週間以内に本店所在地で変更登記を行わなければなりませ
 ん。

10.株式会社に組織変更するには?

 合同会社が組織変更して株式会社になる場合は、組織変更計画書を作成し、定款に
 別段の定めがない限り、社員全員の同意を得る必要があります。

 組織変更計画書には、1.株式会社の目的、商号、本店所在地及び発行株式総数、2.定
 款に定める事項、3.取締役の氏名、4.監査役などの氏名、5.株式数、6.社員への株式の
 割り当て、7.効力発生日などを盛り込む必要があります。

 さらに、組織変更をする旨及び一定の期間内に異議を述べるべきことを官報に公告する
 などの債権者保護手続きを行う必要があります。 

 その後、本店所在地で2週間以内に、合同会社の解散登記と株式会社の設立登記を同
 時に申請することになります。

11.合同会社を解散するには?

 合同会社は、会社法上の解散事由(社員の欠缺、合併、破産、会社解散命令)及び定款
 で定めた解散事由の発生、そして、総社員の同意により解散します。

 その際、清算人を置き、債権の取立て、債務の弁済、残余財産の分配などの清算手続
 きを行います。

 清算人には、業務執行社員、あらかじめ定款で定めた者、社員の過半数の同意によっ
 て定めた者などが就任し、原則として会社を代表します。

 解散においては、解散の登記及び清算人の登記をし、清算手続完了後に清算結了の
 登記をする必要があります。 

 なお、株式会社とは異なり、合同会社については、たとえ休眠会社であっても、みなし
 解散(登記官の職権による解散登記)は適用されません。

12.合名会社、合資会社から種類変更するには?

 合名会社、合資会社は、定款を変更することで合同会社に移行(種類変更)することが
 できます。

 まず、原則として総社員の同意により、「社員全員を有限責任社員にする」旨の定款変
 更を行います。

 なお、合資会社については、無限責任社員全員が退社することで合同会社となる定款
 の変更をしたものと見なされます。
 定款変更後に社員は合同会社に対する出資金の全額を払い込む必要があります。

 その後2週間以内に本店の所在地において、合名会社または合資会社の解散登記と
 合同会社の設立登記を同時に申請する必要があります。

13.内部統制(コンプライアンス体制)は必要か? 

 会社法は株式会社に対し内部統制、つまり取締役の職務執行が法令及び定款に適合
 することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要
 な体制を構築することを義務付けております。

 これは、大会社(最終事業年度の貸借対照表上の資本金が5億円以上または負債の
 合計が200億円以上の株式会社)と、委員会等設置会社を対象にするものです。

 しかしながら、合同会社の社員ないし業務執行社員は、善管注意義務及び忠実義務
 を負っており、法令違反による不祥事を防止するための体制の構築はこれに含まれる
 ものであることや、判例においても「健全な会社経営を行うためには、会社が営む事業
 規模、特性等に応じて内部統制システムを整備することを要する。」と示しております。 

 そのため、合同会社についても内部統制(コンプライアンス体制)の構築は必要不可欠
 なものです。 

14.資本金の額を減少(減資)するには? 

 合同会社は、損失を補てんするため、資本金の額を減少(減資)することができます。
 その際、減少する資本金の額は、損失額として法務省令で定める方法により算定され
 る額を超えてはなりません。

 また、出資金の払戻しのため、減資することもできますが、減少する資本金の額は、出
 資払戻額から出資の払戻しをする日における余剰金額を控除して得た額を超えてはな
 りません。 

 なお、余剰金額とは、資産額から「負債+資本金+その他法務省令で定める各勘定科
 目に計上した額の合計額」を引いて得た額をいいます。 

 その後、官報への公告、債権者への催告など債権者異議手続きを経て、変更登記を申
 請することになります。

 債権者異議手続が終了した日に減資の効力が生じることになります。

15.株式会社(特例有限会社も含む)から合同会社に組織変更するには? 

 株式会社(特例有限会社も含む)が組織変更して合同会社となる場合は、まず組織変更
 計画書を作成し、株主総会で総株主の同意を得る必要があります。 

 株主総会で同意を得たら、組織変更決議を公告し、債権者保護手続(組織変更する旨、
 計算書類及び一定期間内に異議を述べる旨を官報等に公告すること)を行わなければ
 なりません。

 その後、本店所在地で2週間以内に、株式会社または特例有限会社の解散登記と合同
 会社の設立登記を同時に申請することになります。 

16.議事録などの文書は作成する必要があるの?  

 株式会社は、株主総会議事録または取締役会議事録の作成が義務づけられています。

 一方、合同会社は、株主総会及び取締役などの機関を設置する必要がないので、議事
 録を作成することまでは求められていません。 

 しかし、変更登記を行う際は、総社員の同意書などの書面の添付が求められることや、
 特に競業取引または利益相反取引において社員(業務執行社員)の善管注意義務及び
 忠実義務を果たすためにも、会社の意思決定について議事録に準じた文書(同意書等)
 をなるべく作成しておくべきです。 

 文書を残しておけば、後のトラブルを予防できます。
 さらに、社員の報酬(役員報酬)を決定変更した際も同意書を作成するべきです。

17.NPO法人、社団法人から合同会社に移行するには?

 非営利法人であるNPO法人、社団法人は法人格を有してますが、営利法人、つまり会社
 ではないため合同会社などに組織変更することは認められていません。 

 そこで、会社形態に移行したいのならば、NPO法人または社団法人を解散して会社を設
 立するか、解散する前に新会社を立ち上げ事業譲渡する形で移行することになります。
 その際は、後者のやり方が無難であるといえます。 

18.現物出資または事後設立するにあたっては?

 現物出資とは、パソコンや自動車といった動産、土地や建物といった不動産、債権、有価
 証券、特許権や著作権といった知的財産権など金銭以外の財産をもって行う出資であり
 ます。

 一方、事後設立とは、会社設立後2年以内に、設立前から存在する営業上の財産を継続
 して使用するために譲り受ける契約で、変態現物出資とも言われています。

 株式会社設立の場合に現物出資を行うにあたっては、裁判所の選任した検査役の調査が
 必要となります。

 ただし、出資する財産価額が500万円以下の場合、また、事後設立する場合は、検査役
 の調査は不要となります。

 それに対し、合同会社設立の場合は、検査役の調査制度の対象にはなっておらず、出資
 する財産価額に関わらず検査役の調査などは不要で、さらに、事後設立する場合も同様
 に検査役の調査は不要となっております。 

 現物出資した際に、登記、登録その他権利の設定または移転を第三者に対抗するため
 の必要な行為は、総社員の同意により合同会社設立後でもよいとされています。

19.みなし解散はあるの? 

 みなし解散とは、休眠会社について、法務大臣による公告及び登記所からの通知を行い、
 公告から2か月以内に事業の廃止をしない旨の届出または役員変更等の登記をしていな
 い場合に、登記官が職権でみなし解散の登記を行う制度であります。

 休眠会社とは、最後の登記から12年を経過している株式会社を言います。

 株式会社の役員である取締役または監査役には任期があることから、長期間にわたり
 役員変更登記を怠ると、みなし解散の処分がされることになります。

 その一方で、合同会社についてはみなし解散制度は適用されません。 

20.法人を業務執行社員に選任したら? 

 合同会社の業務執行社員には、自然人のみならず、法人もなることができます。
 特に、ジョイントベンチャーを目的に合同会社(合弁会社)を設立するにあたっては、法
 人が業務執行社員になるケースが多いと思われます。

 その際は、特定の個人を職務執行者として選任し、その者の氏名及び住所を他の社員
 に通知すると共に登記しなければなりません。

 職務執行者は、業務執行社員と同様に、善管注意義務及び忠実義務、また、競業避止
 義務や利益相反取引を制限する義務などを負っております。 

21.合併、会社分割、株式交換をするには? 

 合同会社の合併については、合同会社を存続会社とする吸収合併と、新たな合同会社
 を設立する新設合併が認められます。

 一方、会社分割については、分割した事業を合同会社に承継させる吸収分割と、分割
 した事業を新たに設立する合同会社に承継させる新設分割が認められます。

 合同会社においては、効力発生日の前日までに、合併については合併契約書を、会社
 分割については分割契約書などを作成し、原則として総社員の同意を得る必要があり
 ます。 

 会社分割をするにあたっては、労働契約承継法により、意思決定をする前に労働者と
 の協議や通知、異議申し出の期間を設ける必要があります。

 それから、株式交換とは、発行済株式の全部を取得して株式会社を完全子会社化する
 ことであり、合同会社も完全親会社になることが認められます。

 合同会社が株式交換をするには、株式交換契約書を作成し、原則として総社員の同意
 を得る必要があります。

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