政府は、家族農業経営をはじめ農業の経営管理能力を向上させ、近代的な家族農業
経営を実現するための手法の1つとして家族経営協定の締結を推進しております。
家族経営協定とは、夫婦や親子など家族農業経営に携わる者が、意欲とやりがいを
持って経営に参画できる魅力的な農業経営を目指し、経営方針や役割分担、就業条
件などについて話し合い取り決めた協定であります。
家族経営協定は、男女共同参画基本法による基本計画に位置づけられるもので、就
業規則と知的資産経営報告書の要素を持ち合わせたものとなっております。
家族経営協定によって、労働条件や受け取る報酬などが明確になり、さらには、複式
簿記が取り入れられることもあって、後に家族農業経営を法人化へ展開させることも
容易になります。
当行政書士事務所は、家族経営協定書の作成や、農地所有適格法人設立または農
業法人設立と農業経営の法人化もサポートしております。
家族経営協定締結のメリット
制度上のメリット
1.夫婦や親子(後継者も含む)などが共同で認定農業者(農業経営改善計画を作成
し市町村の認定を受けた農業者)になることができること
2.農業者年金保険料(月額2万円)の国庫助成(1万円から4千円の補助)が最長で
20年間、配偶者のみならず、後継者も受けられること
3.日本政策金融公庫が長期低利で融資するスーパーL資金(農業経営基盤強化資
金)または経営体育成強化資金、農林中央金庫などJAバンクグループが融資し
国が利子補給する農業近代化資金の制度融資を利用することができること
4.農地の貸借や売買などのあっせんが受けられること
5.農林水産祭参加の表彰行事(天皇杯、内閣総理大臣賞、日本農林漁業振興会
会長賞と、農産・養蚕、園芸、畜産、林産、水産、多角化経営、むらづくりの7部
門に授与)における夫婦連名表彰の対象となること
6.新規就農対策の農業次世代人材投資資金経営開始型(原則45歳未満の新規
就農者の定着を図るため、経営が不安定な就農直後5年以内の所得を確保す
るための給付金)の特例(夫婦合わせて1.5人分が支給)が適用されること
7.協定締結者が共同でエコファーマー認定(環境にやさしい栽培技術など持続性の
高い農業生産方式の導入に関する計画を作成し都道府県の認定を受けたもの)
が受けられること
8.日本政策金融公庫などの事業性評価融資(農業者の経営能力や経営戦略を重
点的に評価して行われる融資)といった財務データや保証または担保に依存しな
い融資が受けやすくなること
その他、地方自治体によっては、独自の補助金制度を利用できたり、6次産業化を展
開するにあたり金融機関からの融資における優遇措置が受けられたりします。
派生的なメリット
1.経営理念や経営方針を共有できるため、家族全員の経営意識が向上すること
2.役割分担を通じて、経営の合理化が図られ、さらには、直売や加工販売といった6
次産業化へ発展させることもできること
3.後継者への経営移譲(事業承継)が円滑にできること
4.農業経営を法人化するための第一歩(ステップ)となり、法人化後も経営改善のツ
ールとして有効であること
5.農業者の働き方改革や農業生産工程管理(GAP)の認証取得のためのツールに
なること
家族経営協定書の記載事項
1.目的
2.経営方針(長期的な経営目標など)
3.役割分担(経営、生活、社会貢献など)
4.収益分配・労働報酬
5.就業条件(労働時間、休日など)
6.将来の経営移譲(時期、方法、移譲後の農業への参画)など
協定書の末尾には、家族経営協定を締結した当事者と、農業委員会や農業改良普
及センターなど立会人の署名捺印がされることになります。
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